みなさんこんにちは、橋本翔太オフィス 心理士スタッフの田中です。
私が小学生の頃のある日、友だちMくんが赤い顔で鼻水ダラダラ、咳をゴホゴホしていました。
誰の目から見ても明らかに体調が悪い様子だったのですが、
「俺は風邪を引いていない!」
と、頑なに認めないということがありました。
もちろん、その時点では医者に診断されていないので風邪とは断言できないのですが、
他の友だちから見ても、それは明らかにMくんは風邪であろうと思われる状態でした。
しかし、絶対に認めずに、「風邪なんか引くような人間じゃない!」と言い張っていたんですね。
今振り返ると、これは防衛規制でいう、【否認】が働いていたんじゃないかなと思います。
否認とは
まず、防衛機制というのは、私たちを一生懸命に守ってくれる心の働きの総称のことです。
その防衛機制の中に【否認】という働きがあり、受け入れ難い現実や感情を、
「そんなことは起こっていない、感じていない」と、否定する、否定したくなる心の働きです。
現実として起こったこと自体を否定することもあれば、
起こったことは認めつつも、そこで生じた感情や感覚を否定することもあり、
ここでは割愛しますが、他にもさまざまな形の否認があります。
否認することによって、自分の心が傷つくことから守っているわけですが、
友だちのMくんでいうなら、風邪を引いたと絶対に認めないことで、
「自分は弱い男である」
「弱い自分には存在理由がない」
と、周りから思われないよう、自分自身でそう思ってしまわないよう、
心が傷つくことから守っていたのだと思います。
※あくまで心理分析なので、Mくんが実際にそう感じていたかはわかりません。
否認が働くのはそれだけ大切にしているという証
誰であっても生きていれば山あり谷ありですから、
すべてがすんなりと認められる出来事や感情であるとは限りませんよね。
もし、自分が重度な障害を負ってしまったらどうでしょうか。
もし、大切な人が急にいなくなってしまったらどうでしょうか。
「まあ、仕方ないかー」と、
すぐに認めることができる人はほとんどいないでしょう。
どうしても認めたくないことがあり、否認が働くのはとても自然なことです。
特に上記のような衝撃の大きな出来事が起きてしまった場合には、
否認が働かない方が不思議なくらいです。
そして、友だちのMくんにとっては、
風邪を引いていると絶対に認められないのは、それだけの大きな背景があったのだと思います。
否認していると気付いたら
でももし、否認が働いていることで何かしらの問題が起こってしまっている、
例えば、
否認する気持ちによって人間関係がうまくいかなかったり、
素直な自分の気持ちを否認してしまい、本当にやりたいことを封印してしまったり、
などで困ってしまっているのであれば、
否認することによって、
・どんな現実から目を背けたいんだろう、
・どんな感情や感覚を感じるのを嫌がっているんだろう
と、少しだけでも自分の心を掘り下げてみてはいかがでしょうか。
自分がどんなことを認めたくないのか、
まずはそれがわかるだけでも、変化のきっかけになるかもしれません。