みなさんこんにちは、橋本翔太オフィス 心理士スタッフの田中です。
大人になってから、友だち作りが難しくなったなあと感じたことはないですか?
つい先日、心理に関するとある研修があり受けてきたのですが、 そこでお隣に座っていた方と仲良くなりまして、3日間の研修の時間を共に過ごしました。
その3日間が、利害関係のない、中高生時代の頃のような友人関係の感覚を呼び起こしてくれて、 懐かしく、まるでタイムスリップしたような、楽しい時間だったんですね。
でも、その楽しさと同時に、ふと心に浮かんできた問いがありました。
それがタイトルの「大人になってからの友だち作りって、どうしてこんなに難しいんだろう?」
という問いです。
中高生時代の頃であっても、なんでもかんでも簡単に友だちができたわけではありませんでした。
しかし、それでも思い返してみると、仲良くなった友人たちとは、何か特別なことがあったというより、
いつの間にか、自然と一緒にいるようになっていた、そんな感覚が多かったように思います。
今回は、大人になってから感じた“友だち作りの難しさ”について、 私が実際に感じた感覚を交えながら心理的な視点で少し掘り下げてシェアしてみたいと思います。
「友だち作り」を分解してみる
「大人になると友だちができにくくなる」と感じたとき、
それはどんな瞬間に起きているのかをよく考えてみました。
そうすると、「関わりが始まるところ」と「関係を深めていくところ」、
この2つの段階でつまずいていることに気づきました。
そこで今回は、友だち作りのプロセスを次の二段階に分けて考えてみます。
1段階目:はじめて相手と関わる段階 = 【接触・形成】
2段階目:関係ができたあとに、それを深めたり続けたりしていく段階 = 【深化・維持】
そしてこの2つの段階には、
それぞれ異なる“心理的なハードル”があるのではないかと思ったのです。
1段階目の【接触・形成】では、“大人としてのスクリプト”が、
2段階目の【深化・維持】では、“目的意識化”という心の働きが、
それぞれ関わってくるのではないかと感じたんですね。
ちょっとよくわからない言葉が出てきましたので、 これから簡単に説明していきます。
「理由がないと話しかけられない」 接触・形成の難しさ
まずは【接触・形成】の段階についてですが、
ここでは「スクリプト」という心理学の言葉が関係しています。
スクリプトとは、ある状況において「こうするのが普通」と、
自分の中で無意識に決めてしまっている行動のパターンや思考パターンのことです。
たとえば、
「映画を見る時は東京駅の映画館で、レイトショーで、後ろの右の席を取る」
みたいな自分の中の“お決まりごと”もスクリプトの一つです。
そして、大人になるとこんなスクリプトがいつの間にか形成されていきます。
「理由もなく人に話しかけるのは、不自然である」
中高生時代の頃は、毎日同じ空間にいて、年齢も近くて、共通の話題も多い。
そんな環境だからこそ、「話しかけるのが自然なこと」というスクリプトでした。
ところが大人になると、
「同じ空間にいたとしても必要なことしか話さない方がいい」
「プライベートに踏み込むと失礼かもしれない」
といった考えが、暗黙のルール、つまりスクリプトとして、自分の中に根付いてきます。
その結果、
「話しかけたいけど、迷惑かもしれない」
「何かしらの理由がなければ話しかけるのは難しい」
と、そんなふうに感じてしまい、最初の一歩がなかなか踏み出せなくなるのです。
つまり、大人のスクリプトは、関わりを生み出すよりも、
距離を保つことが優先させてしまうのかなと感じました。
これが、1段階目の壁の、【接触・形成】の難しさの正体なのだと思いました。
「この関係に意味はあるのか?」 深化・維持の難しさ
次に、【深化・維持】の段階についてですが、
これは、最初の接触を経て関係が始まった後、
そこからどうやって仲を深め、つながりを続けていくかというプロセスです。
1段階目を経て、お互いが少し話すようになったとしても、
それはまだ、友だちを作れたとは言えません。
なので、2段階目の関係を維持し、深めることが必要です。
しかし、ここで立ちはだかる心理的な壁が、「目的意識化」です。
どういうことかというと、
大人になると、友人関係にも「意味」や「目的」を求めてしまうようになるということです。
「この人と仲良くなることに意味はあるのだろうか」
「この関係に時間やエネルギーをかけて何を求めたいのだろうか」
そんな風に、感情ではなく変に合理的な尺度で、
人間関係を測ってしまう自分に気づくことがあります。
中高生時代の頃は、ただ一緒に笑って過ごすだけで、自然と関係が深まっていました。
でも、大人になると、「ただ一緒にいる」ことが難しいと感じます。
仕事のことや家庭のことなどでスケジュールがあり、気力や体力も限られています。
だからこそ、「この人と今後どう付き合っていくか」という意図がなければ、
関係が自然と続かなくなってしまうのです。
いつの間にか会うことも、連絡を取り合うこともなくなるのは、あるあるですよね。
さらに、
自己開示のハードルも大人になると上がりますよ。
「こんなこと話していいのかな」
「距離を詰めすぎたら嫌がられないかな」
そう思ってしまい、軽い関係のまま進展せず、
やがて疎遠になってしまうということもよくあります。
つまり、大人になってからの関係維持には、
積極的に関わる覚悟と、それを続ける意志が必要なわけです。
自ら起こす行動が変化をもたらす
ここまで、【接触・形成】と【深化・維持】、
この2つの段階にある、大人になってからの友だち作りでの難しさについて考察してきました。
もちろん友だち作りの難しさに影響する背景は他にも色々とあるかとは思いますが、
今回の考察に共感を示していただける方はけっこう多いのではないでしょうか。
そして、今回の体験を通じて感じたことは、
「自らの行動が、現実や心の変化をもたらす」ということです。
これは自己啓発本やそういったセミナーなどでもよく耳にする話かもしれないですが、
やはり主体的に、積極的に、行動をとることが、変化の鍵なんです。
1段階目の【接触・形成】では、
お隣の席に座っていた方に自ら話しかけてみました。
ちょっと迷惑かなとも思いつつ、
休憩の度に、研修の内容に関する話題で話しかけ、
途中からお互いの個人的な話しを少しずつ話したりしました。
そして、研修終了後には、これまた迷惑かなとも思いつつ、
連絡先を聞いて、交換しました。
2段階目の【深化・維持】では、
連絡しないといけない目的はありませんでしたが、たわいの無い話題で連絡してみたり、
もっと仲良くなりたいという思いを、素直に伝えたりしました。
このような行動を自ら起こさなければ、
仲良くなることも、そもそも話す機会もなかったのかと思います。
そう思うと、ちょっと気が引けることや、勇気がいることを、
自ら行動を起こして、掴み取っていく姿勢が、
現実を変え、自分の心をプラスに変化させていくことができると、改めて実感しました。
もちろん、無理をして頑張りすぎる必要はありませんし、
心の安全領域(コンフォートゾーン)を大きく飛び出してしまうような無理な行動は、かえって負担になります。
ですが、今の自分が少しだけできそうなことを、主体的に、積極的に行動を起こすことで、
必ず得られる何があると思うのです。
これは、大人になってからの友だち作りだけに限らず、
多くのことに当てはまることなのかなと思います。
心理士スタッフ 田中