人の話を「聴けない」、陥りがちな態度とは

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みなさんこんにちは、橋本翔太オフィス 心理士スタッフの田中です。

みなさんは、人の話を「聴く」という行為に、思いのほか難しさや複雑さを感じたことはありませんか?

1対1の場面で、話し手である相手の話を、自分が聴き手としてしっかりと聴けているのだろうかと、少なからずそう思った方はいらっしゃるのではないでしょうか。

相手が聴いてもらえたと感じるかどうかは、もちろんその相手個々人の感じ方次第ではあるのですが、とはいえ、やはり聴けていない態度として共通するものはあるのです。

そこで、今回のコラムでは、人の話を聴く上でついついやってしまいがちな、「話を聴けてない態度」について、いくつかシェアしたいと思います。

話を「聴く」とはどういうことか

「人の話を聴く」という行為は、実はとても難しく、奥深いものです。私個人的には、話すことよりも聴くことのほうが難しいと感じます。

さて、冒頭から話を「きく」という言葉に、「聞く」ではなく「聴く」という漢字を当てているのですが、「聞く」と「聴く」では全く意味が異なります。

一度ここで、「きく」について簡単に整理してみますと、日本語で「きく」には、主に3つの種類、態度があります。

【聞く】=自然と耳に入ってくる音や言葉を受動的にきくこと
【訊く】=自分にとって必要な情報を得ようと問いかけてきくこと
【聴く】=相手の話を理解しようと興味や関心、意識を向けてきくこと

同じ「きく」という行為であっても、その意味合いはそれぞれ全く異なっています。「聞く」と「訊く」は、自分を主体とした行為である一方、「聴く」は相手を主体とした行為です。これはとても大きな違いです。

「聞く」や「訊く」という行為は難しくはありません。むしろ、誰もが日常的に行なっていることです。ですが、「聴く」という行為は、意識したり、注意を向けていないと、なかなかできる行為ではないのです。そして、これからご紹介するような、やってしまいがちな聴けてない態度をとってしまうことが起こります。

会話の主導権を奪ってしまう態度

まず、やってしまいがちな聴けてない態度の一つ目は、話し手の話の主導権をすぐに奪ってしまうことです。

たとえばこんな感じです。

A「昨日は残業になっちゃって、帰りが2時間も遅かったんだ。すごく疲れたよ。」

B「大変だったねー。私もこの前2時間くらい残業でさ、そのときはさー、・・・」

何の変哲もないよくありそうな会話の流れですが、Aの残業の話が、いつの間にかBの残業の話に切り替わり、この会話の主導権がAからBになっていますね。

Aとしては、残業になってしまってすごく疲れた話をこれから展開させて、Bに話を聴いてもらいたいところだった矢先に、会話の主導権がBに渡ってしまい、十分に話すことができなくなってしまいました。

会話の主導権が切り替わること自体に問題はなく、むしろ切り替わり、両者が互いに話せることが大切なんですが、問題はそのバランスです。

まずはAの残業の話が一段落し、Bの話に切り替わっていれば、聴いてもらえなかった不満がAに残りにくくなっていたことでしょう。

会話の主導権がどちらか一方に偏ってしまうことで、自分の話がほとんどできない側の人においては、会話をしていてあまり心地よいと感じられなくなってしまいます。

なぜなら、話を「聴くこと」は、実はとてもエネルギーを必要とする、という理由もあるのですが、そもそも人は自分の話を「聴いてもらいたい」という欲求が、自分が「聴きたい」欲求よりも強くあるからです。

小さな子供が、一生懸命に思ったことや今日あった出来事を、親に話している光景をみかけることがありますが、大人になった今でも、そうやって人に聴いてもらいたい気持ちが少なからずあります。誰であっても、話をしっかりと聴いてもらって、共感してほしいものなのです。

早まった結論付けをしてしまう態度

やってしまいがちな二つ目の聴けてない態度は、早まった結論付けです。

相手の話の途中で、「つまりこういうことでしょ」と、推測をして話をまとめてしまったり、「何が言いたいの?」と、結論を急かしたりすることも、聴けてない態度としてよく起こります。結論を急かさせると、相手はこれ以上話してはいけない気持ちになりますし、話の途中でまとめられると、仮にそれが相手の意図と合致していたとしても、聴いてもらえたという気持ちは残りにくいのです。

また、一見聴けているような態度に思える、話の途中での逐一のリアクション行為も、早まった結論付けになっている場合があります。

たとえば以下のような感じです。

A「職場に苦手な上司がいてさ、その上司が昨日転勤になることが決まったんだよね。」
B「そうなんだね、それはよかったね!」
A「いや、よかったってわけじゃなくてね、その上司にはけっこうお世話になってて、、」
B「え、そうなんだ。じゃあ寂しいね。」
A「うーん、寂しいわけでもなくてさ。。一応お世話になったし、何か渡そうと思っているんだけど、」
B「えー!それは優しい!」
A「優しいというか、、とりあえず礼儀として何かを渡さなきゃなと思っているだけで、、、」

極端な例かもしれませんが、このようにAの話の途中で、Bが思い込みなリアクションを挟んでしまうと、Aの話はなかなか前に進まず、話す気持ちがどんどん減退していってしまいます。この例は一見聴けているようで、結論付けてしまっている聴けていない態度なのです。

否定的な評価やアドバイスをしてしまう態度

やってしまいがちな三つ目の聴けてない態度は、否定的な評価や、求められていないアドバイスをしてしまう態度です。

多くの場合、相手としては、聴き手にただただ話を聴いてほしいと思っているだけであって、そこに否定的な評価やアドバイスは求めてはいません。特に、深い悩み事などがテーマであった場合、こういった態度は相手を傷付けてしまう恐れが大いにあります。

「それは良くないと思う」
「私はそれに賛同できない」
「もっとこうしたほうがいいよ」
「そんなことすぐにやめなよ」
「私だったらこうするけどな」
「だから前に、そうなるっていったじゃん」
「まあ、あなたの好きにしたらいいんじゃない」

上記は一例ですが、ついついこういったことを相手に言ってしまうことがあると思います。ですが、こう言われた相手は、当然聴いてもらえたという気持ちにはなりにくいでしょうし、話さなければ良かったとさえ思うこともあるでしょう。

聴き手としては、相手のことを思い遣ってという気持ちで、否定的な評価やアドバイスをしてしまうこともあるのですが、多くの場合そういった態度はナンセンスに終わります。もちろん関係性や、その会話の文脈などにもよりますが、あまり良い結果は期待できません。

ここで重要な聴く態度というのは、受容的で、共感的な態度です。

たとえ、自分の価値観や考え方と180度の差があったとしても、相手はそう感じているという、その事実があると認識し受け止めることが大切で、その話の内容や相手の思いを理解しようと努める態度が、共感的な態度です。決して、受け入れる必要はなく、「あなたはそう思っているんだね。」と、ただただ受け止めるだけでいいのです。それが結果として、受容的で、共感的な態度として相手に伝わり、聴いてもらえたと相手は感じやすくなります。

また、無理にいいことやポジティブなことを言わなくとも、じっと聴いているだけで、話し手は聴いてもらえたと思うのです。

質問できている=聴けている、ではない

一つ余談ですが、質問することが聴くこと、だと思ってしまうことがあります。

相手の話の内容に対して質問をし、話を展開させる、という構図は、しっかりと聴いているように見えるのですが、実はそれは自分がききたいと思う質問をしている、つまり、先ほどの「訊く」行為になってしまっていることがあるのです。

「聴き上手になるには、相手に質問をしましょう」というような方法がよく紹介されていますが、実はここに落とし穴があって、自分が訊きたいことばかりを質問してしまい、話の流れや展開が、相手が意図していた方向からいつの間にかズレてしまいます。

相手が話したいことや、会話の自然な流れに適した質問であればよいのですが、質問をするということ自体に意識が向いてしまい、なかなか相手の話したいことを促すような、適した質問になっていないのであれば、それは当然、相手は聴いてもらえたという気持ちにはなりにくいのです。質問自体は、聴く態度においてとても大事なアクションではありますが、ここを思い違いしてしまうと、かえって逆効果になってしまうので注意したいポイントです。

聴くスキルではなく、聴く態度

これまで聴けていない態度についてご紹介させていただきましたが、結局のところ、人と人との生きた会話に大切なのは、こういった聴けてない態度を打開する意識付けやスキル、テクニックなどではありません。「上手に聴くには、こうしたほうがいい、ああしたほうがいい」という、表面的な方法はいくつも存在しますが、聴く上で最も大切なことは、「相手に興味や関心を寄せて、私はあなたの話を聴くよ、聴いているよ」という態度に尽きると私は感じています。

たとえ不器用であったとしても、そういった聴く姿勢があればそれは自然と相手に伝わっていき、その態度が何よりも、聴いてもらえた、という感覚を生み出します。

スキルやテクニックというものは、そういった態度が土台としてある上で、聴く態度をより深めるために駆使すべきであり、その土台のない段階で使ったとしても、やはりどこか表面的なものになってしまいがちです。もちろん、その土台がなければ全く意味がないのかというと、当然そんなことはありませんが、つまりは、そういったスキルやテクニックばかりに囚われてしまう態度に危険が孕んでいるのです。

とはいえ、「相手に興味や関心を寄せて、私はあなたの話を聴くよ、聴いているよ」という態度が、わからない、難しい、という方もよくいらっしゃいます。

・話を被せちゃう
・すぐに自分の話をしたくなる
・黙って話を聴くことに抵抗がある
・結論を早く求めたくなる
・アドバイスがしたくなる
・良いか悪いかの基準で話を聴いてしまう
・自分の価値観と真逆の話が受け止められない

たとえばこんな感じで、聴くことを阻む、いろいろな心理が発動することがあるのです。

そういった場合は、やはりまずは話を聴けない心理的な原因を探り、その課題に向き合っていくことが先決です。上記のようにそれぞれ色々な理由や背景がありますが、それを聴くスキルやテクニックを身につけてカバーするのではなく、自分の内面に向き合っていくことのほうが、結果的に良い聴き手になれると私は感じています。

相手の話を聴いている場面で、その時に自分の心の中でどんな感情や感覚が沸くのか、そしてそれは自分にどんなメッセージを伝えているのか、まずはそこに意識を向けてみることから始めることで、いずれ自然と話を聴く態度が変化していきます。

自分自身の心の声が聴けるようになると、いつの間にか相手の話も、自然と聴けるようになっていくのです。

心理士スタッフ 田中