みなさんこんにちは、橋本翔太オフィス 心理士スタッフの田中です。
みなさんは既に、【投影】という心の現象はご存知かと思います。塾や講座、その他ご自身の心理学の学びにおいても、何度も目にしている心理学用語なのではないでしょうか。
これは私の実体験と言いますか、過去にあった感覚なのですが、心理学を学び始めてしばらく経ったあとでも、【投影】という心の現象がイマイチ理解できなかったんです。とても重要な概念の一つであるのにも関わらず、なんとなくイメージは沸くのですが、うまく言葉で説明できないというか、具体的にどういったことが投影なのか、が、腹落ちするまでかなりの時間を要しました。というのも、長い間イメージ理解だけで留めてしまっていて、改めて学び直す機会を設けなかったからです。
もちろん、イメージや感覚として理解しているだけでも十分かとは思うのですが、よく出てくる心理学用語だからこそ感覚だけの理解頼みだと、「あれ、投影って結局なんだっけ?」「どうなることが投影なんだっけ?」と、私みたいな感覚になっている方も意外といらっしゃるんじゃないかなとふと思いまして。
そういうわけで、今回のコラムでは改めて、【投影】とはどういった心の現象なのかを解説いたします。聞き慣れた用語かとは思いますが、今一度、復習のつもりでご一読いただけると嬉しいです。
自覚ある認められない感情を投影する
まずは、定義からいきましょう。
【投影】とは、「自分の感情や欲求を、外の世界に映し出す、心の現象」を意味する心理学用語です。もっと平たく言えば、「自分の内側を、外に見てしまうこと」と覚えていただくと、よりイメージしやすいかもしれません。
では、「自分の内側にある感情や欲求」といっても、具体的にはどのようなものが投影されるのでしょうか。その正体を2つ紹介しますね。
まず1つ目は、「自覚はあるけれど、認められない感情や欲求」です。
それは本当に人それぞれあるとは思いますが、たとえば「怒りを感じるのは情けない」「腹黒い自分を隠して“いい人”を演じる」「恋人がほしいけれど、そんな自分を許せない」など、自覚はあるけれど、認められない否定したくなる感情や欲求です。
そして自分の心に、こういった感情や欲求を抱くことを否定し、外の世界、つまり、多くの場合は「他者」に映し出します。「あの部下はいつも怒っていて情けない」「あの医者は本当は腹黒いのにいい人ぶっている」「恋人探しに必死な友人に不快感を覚える」といった具合に、自分がそうであっては許せず、あるいは、抱くことに耐えきれないような感情や欲求を、他者に映し出し自分の外側にあると”錯覚”してしまうのです。
こうした投影は、自覚のある感情や欲求であっても、それが【投影】であると知らなければ、外に見ているものが実は「自分の一部」だとはなかなか気付けません。「自覚がある一方で気付けない」というこのニュアンスの説明は難しいのですが、他者に投影して見えているものを、それは相手個人に帰属しているものと解釈し、「自分の認められない感情や欲求に由来している」とは気付けないのです。そこに気付かせないこと自体が、投影の恐ろしい機能であるとも言えます。
自覚ない認められない感情を投影する
そして2つ目は、「自覚のない、認められない感情や欲求」です。1つ目と同様に、心の中にある「認められない感情や欲求」ではありますが、こちらは自覚そのものがないため、さらに気付きにくいものです。
たとえば、「無口で感情が読めない男性に、なぜか緊張して胸が苦しくなってしまい、反射的に攻撃的な態度をとってしまう」。あるいは、「穏やかで優しい女性に対して、過剰に嫌われたくないという感覚が働き、必要以上に顔色をうかがってしまう」など、こうした無意識に感情的、身体的な反応が自分の中で繰り返されているけれど、なぜそうなるのかはわからない。
そして、自覚のある感情や欲求ではないので、それを性格、習慣、癖などのようなものであると考えてしまい、「これが私」として結論付けてしまうことも多いのですが、実際は投影によってそういった反応が起こっていたに過ぎないかもしれないわけです。
自覚のない感情や欲求であっても、このように投影が生じて外の世界に映し出されているということは、やはり自分の心の奥底にそういった感情や欲求がいまだ存在しているということを意味します。1つ目とは異なり、自覚なく意識されていないのは、過去に経験したことのある今後二度と感じたくはない、感じてはいけない部類の感情感覚であると考えられます。
抑圧という心の防衛反応がありますが、まさに普段は心の奥底に押さえ込まれていて、何かしらの引き金によって、先ほどの事例でいうならば、「無口で感情が読めない男性」や「穏やかで優しい女性」と対峙した時に、投影という形で外に映し出され、感情的、身体的な反応が起こるのです。
投影通りの現実を生み出す【投影同一視】とは
投影は、自分の内側で感じていることや求めていることを基準に外の世界を見ている状態です。つまり、色眼鏡をかけて世界を見ているようなもので、赤色の眼鏡をかけていれば外の世界は赤く見え、青色の眼鏡をかけていれば青く見えるのです。そして、私たちが見えていることや感じていることが、現実とは一致していないこともよくあるのです。
ですが、実際には投影した通りの現実を生み出してしまうこともあり、それが【投影同一視】という現象です。(【投影同一化】とも言ったりします。)
たとえば、「私は人から見捨てられる」という信念を持っている人が、恋人にその信念を投影し、見捨てられることへの強い不安や恐怖をぶつけてしまう、ということがあります。そして、心が疲れた恋人は次第に距離を取り、結果として関係が破綻してしまう。これがまさに、投影同一視という心理現象が働いた事例だと考えられます。
恋人相手は本来、少しも離れようとしたり、見捨てようとするつもりがなかったのにも関わらず、投影(私を見捨てるんだという信念)によって自分を見捨てるような言動を取ったことに相手が反応し、信念通りの結果を迎えることになってしまったのです。
このように、自分の中の感情や信念を相手に無意識のうちに渡してしまい、相手がそれに沿った行動を取ることで、投影通りの現実が生み出されてしまうのです。そして、「やっぱり私は見捨てられる存在なんだ」と信念が確証されたことで、その思い込みはさらに強化され、また新たな投影が起こりやすくなってしまうのです。
以上のように、時に投影は自分の内側だけでなく、外側の現実にも波及することがあるのです。
外の世界は自分の内側の写し鏡
投影の対象は、人だけでなく、モノ、場所、時間、空気感など、あらゆるものに映し出されます。「あるモノを見ると、とても悲しそうに見える」「ある場所は安全なはずなのに、なぜか怖いと感じる」「ある時間になると、不思議と家に帰らないとと思う」「あの空気感が漂うと、何か嫌なことが起こるのではないかと感じる」など、実はさまざまです。そういう意味で、外の世界とは、人だけではなく、すべてのものが自分の内側の写し鏡になりうるのです。
改めて【投影】とは、「自分の感情や欲求を、外の世界に映し出す、心の現象」で、「自覚のある、認められない感情や欲求」と「自覚のない、認められない感情や欲求」を、外の世界に映し出すものです。
「なぜ投影が起こるのか」「起こった時にはどうすればいいのか」など、投影に関してもう少し踏み込んで解説をさせていただきたいところではありますが、「投影って、結局なんだっけ?」という疑問を解消するようなコラムとして、今回はシンプルに【投影】の意味を改めて知っていただく機会であればと思います。
また、私も含め、誰もが投影を経験しているはずですし、投影によってうまくいかなかったこともあるはずです。ご自身が、誰に、何を、どんな形で投影をしているのか、今一度、振り返るきっかけにもなれば幸いです。
心理士スタッフ 田中
