「【やる気】が出ないと行動できない」は本当?

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みなさんこんにちは、橋本翔太オフィス 心理士スタッフの田中です。

私は学生の頃からずっと、「やる気」について悩み続けてきた過去があります。

「今日は〇〇したいのに、やる気が出ない…」

「やる気が出たときにやろう…」

「どうすればやる気になれるんだろうか…」

「行動できる人って羨ましいなあ…」

何かを始めようとする時や、たくさん行動できている人を見た時には、いつもこんなことばかりを考えてしまって自分自身のやる気のなさにうんざりしていました。「やりたい」という気持ちは確かにあるはずなのに、やる気が全く起きずに一日を無駄にするような日々を繰り返していたんです。

当時を振り返ると、「やる気さえ出れば、人生変えられるのに…」といつも思っていましたし、やる気が出ないことを行動できない理由として、ある意味、他責的な態度(やる気のせいにしていた)であったかと思います。

行動したいと思えば思うほど、やる気が行動を起こす起爆剤(原因)なのであれば、なんとしてでも起爆させなければなりません。でもそれができずに苦しい思いをして、いつまでも変われない自分に辟易とし、さらにやる気が失われていくという、まさに負のループでした。

しかしある時、ここに一つ、大きな思い違いがあるかもしれないと気付いたのです。

「本当に、”やる気”が行動を起こす起爆剤なのか?」と。

「やる気が出なければ、何もできないのか?」と。

そんなふうに思いました。

「やる気が出ないから行動できない」という幻想

やる気が出ることによって行動に結びつくのだとしたら、「やる気が出ない時に行動できたこともあったアレ」は一体なんなのだろう。加えて、そういった時の方が行動の量も質も高い気がするのです。心の中の現象として何が起こっているのかはわからないけれど、”やる気”が行動を起こす起爆剤であると思っていたことと何か矛盾しているような気がしたのです。

当時の私と同じように、「行動を起こすためにはやる気が必要だ」と思っている人は少なくありません。解釈を加えると、やる気という”原因”によって行動という”結果”が生じるため、行動するためには”やる気”がまず必要なのだ、という考え方です。

しかし実際はその逆のような気がしていて、行動が原因であり、やる気が結果なのかもしれないと思い始めたのです。私の実体験としても、何か始める前は心身ともにずっしりと重い感覚があっても、とにかく少しでもそれに取り掛かってしまえば、いつの間にか集中力が上がり、次々と進めたくなる感覚を覚え、結果として更に行動できていた、という不思議が何度もありました。勉強をしたときも、運動をしたときも、家事や雑務をしたときも、少しでもやりたいと思っていたことや、どうしてもやりたくなく興味関心がないこと以外のことであれば、この不思議体験をしていたことに気付きました。

それらを見つめ直してみると、やる気は原因ではなく”結果”であったと強く実感した体験であり、”やる気”というものは、行動の起爆剤ではなく加速装置と比喩したほうがしっくりきます。

やる気の正体

では、やる気とは一体なんなのか。

やる気とは、”結果”であると言いましたが、もう少し具体的に説明すると、「起こした行動を評価した、結果の一種」です。

「重い腰を上げてしぶしぶ英単語帳を開き読み始めたら、今日はこの1ページは暗記したいという思いが湧いてきて、取り組み出して気付いた時には3ページも進んでいた」みたいなことがありますが、英単語帳を開いた”行動”が、1ページは暗記したいという”評価”のもと、やる気という”結果”を招き、3ページ進めた行動の加速が起こったのです。最終的に行動の加速が起こったのには確かにやる気のおかげではあるのですが、やる気が出る/出ない以前に、まず先に行動があったからこそやる気に結びついたということです。

ボタンを押すと餌が出てくる箱の中に空腹のネズミを入れて、ネズミがボタンを押すことで餌が出てくることを学習した結果、ネズミがボタンを押す行動が増えた、という実験があります。これは【オペラント条件付け】という心理学の有名な実験ですが、この実験を行ったスキナーという心理学者も、行動して得た評価や結果によって、その後の行動頻度が変化することを提唱しています。ボタンを押して餌が出てくることが、ネズミのやる気を掻き立て、行動の回数が増えていったということですね。

この実験からもご理解いただけるように、やる気の前には行動があるということが示されています。

これまでは、「あと5分してから…、少し休んでから…、これが終わってから…」などと、色々な理由を付けては、気が付けば一日が終わってしまっていた。気がつけば1週間、1ヶ月、1年と終わってしまっていた。そして、「明日からは頑張ろう、来月からはしっかり取り組もう、来年からは生まれ変わろう」と、確固たる決意をしたはずなのに、それでもやる気が自然と湧いてくることに期待している自分がいた。

しかし、やる気の正体に気付いたのであれば、これからの行動は少し変わるかもしれません。そしてその少しの行動の変化が習慣化され、人生が大きく変わっていくかもしれないのです。まずは知識として理解し、そして実際に自分の体験として身体で感じてみることを繰り返していくと、本当の意味でやる気が出てくる時の感覚や、その状態にあるときの感覚が理解できるようになってくると思うのです。

個人的な感覚ですが、行動前の「よし、やるぞ!」というような意気込みにやる気が宿ることはほとんどありません。意識がその行動だけに集中し、身体が勝手に動いているような感覚が、私にとってのやる気状態です。少し奇妙な話かもしれませんが、「よし、やるぞ!」と意気込んだ瞬間に、逆に「ああ、、めんどくさい。。」という感覚になることが多いので、本当の意味でやる気を感じられている時というのは、やはり必ず何かしらの行動が先にあるのです。

初めの行動を起こすための2つの方法

「理屈はわかったが、じゃあその最初の行動を起こすためにはどうすれば良いの?」という声が聞こえてきそうですが、まさにその部分をこれからお伝えいたします。もちろん、「最初の一歩を踏み出すためには、気合いと根性だ!」とは言うつもりはありませんし、それができれば誰も悩みません。私の実体験からですが、2つの思考の囚われに気付き、改めたことによって、以前より”やる気”に振り回されにくくなりました。

1つ目は、「行動の顛末の大変さを再評価する」ということです。

行動が起こせない理由には、やりたいと思う気持ちとは裏腹に、「めんどうくさい、大変そう、疲れそう、しんどい…etc」といったようなネガティブなイメージが強く湧き出てくることがあると思います。冬の朝にランニングをしたいと思ったとすると、「しんどいし、寒いから嫌だなあ。。」と思いますよね。ですが、改めて「冬の朝のランニング」という行動の顛末(最初から最後まで)を想像してみます。しんどいのは朝布団から出る時で、寒いのは外に出た数分であることに気付きます。走り出したその数分後には身体が程よく温まり、朝の静けさや朝日に包まれて、爽快な気分を味わえる瞬間が訪れます。

しかしながら、事実に反して脳はどうしても辛い部分をピックアップしてしまい、それがその行動の全てであると錯覚させてくるのです。しかし実際はそんなことはなく、寒いししんどい側面もあるけれど、走っている時の爽快感や、走り終えた時の達成感を味わえる側面もあるわけです。

このように、本来はその行動の過程の全てがネガティブではないはずなのにネガティブな側面ばかりが強調されやすいですが、一連の行動を再評価してみると実際はそんなことはなく、捉え方が少し変わって心理的なハードルがぐっと下がるのではないでしょうか。物事の実際をしっかりと見つめようとする態度はとても大事なことです。

2つ目は、「少なすぎる/小さすぎるくらいを最初の行動目標にする」ということです。

朝のランニングという行動をしたいのであれば、毎朝3キロ走るなどの目標を最初から立ててしまうと非常に達成しずらくなります。それこそネガティブなイメージに囚われやすくなることでしょう。大事なポイントは、まずは少なすぎる/小さすぎるくらいのことを目標にすることです。たとえばですが、まずはランニングウェアに着替えて外に出るだけで十分なのです。(もはや、朝走る予定の時間になったら布団から出るだけでも良いと思います。)

ランニングとなると、どうしても〇〇キロ走る、〇〇分走る、などのような目標を立てがちですが、やる気が出ずにそれが続かないのであれば、まず目標とするのは、ランニングウェアに着替えて外に出るだけで良いのです。「それでは走ってもいないので全く意味がないじゃないのか」と思うかもしれませんが、本当に意味がないことというのは、目標を高く設定したがためにランニングのための最初の行動すらも全く起こせないことです。

やる気とは結果であるとお伝えしたとおり、ランニングウェアに着替えて外に出るだけで自然とやる気が出てくるでしょうし、3キロ走れなくても50メートルでも走れば、朝起きれずにランニングをしなかったことよりも断然素晴らしい成果となります。大切なことは、走ることを目標にするのではなく、やる気が自然と出てくるような行動習慣を身につけることを先に目標とすることです。それが習慣になってしまえば、朝がくれば何も考えなくともランニングウェアに着替えて外に出るようになり、外に出れば自然と走り出していることでしょう。その状態になってはじめて、距離や時間の目標を立て、成果に応じて少しずつ負荷を増やしていけば良いのです。

“やる気”とは、行動を起こした後に生じる”結果”です。現実を見つめ直し、小さすぎるほど小さく始めることで、あとはやる気が加速装置の如く、自然と心も身体も動かしてくれるのです。

是非、体感して頂けたら幸いです。

心理士スタッフ 田中